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健康経営コラム

法令遵守は健康経営の基盤を成すもの(後)♯6

健康経営はCSR、法令順守の考え方を踏襲しているもので、独立した考え方・マネジメント手法ではないことを健康経営に関連する法律や守るべき義務など公法的規制について前回ご紹介しました。今回はその後編、私法的規制についてお伝えします。

目次

法令遵守と私法的規制

労働者の健康管理上の問題に関する私法的規制としては「安全配慮義務」の遵守が重要な意味を有しています。安全配慮義務の範囲は裁判例を通じ拡大傾向にあり、これに対して一定の歯止めの必要性も議論されています。

安全配慮義務の履行に際しては、経営者だけでなく管理監督者、労働者本人それぞれにおいて期待される役割を果たすことが求められていますし、労働者の健康管理上の問題は、公法的規制はもちろん、私法的規制の対象にもなります。

健康経営の意義の1つがリスクマネジメントと言えるのもこのようなことからです。

民事上の損害賠償責任と安全配慮義務

私法上、企業に課せられた義務に違反して、疾病の発症・悪化に至った場合には、企業は当該労働者に対して損害賠償責任を負うものです。不法行為責任もしくは契約責任を問われるところですが、安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任として議論されているのは契約責任にあたります。

安全配慮義務という概念は、1975年2月のある判決で最高裁判所が認めたのが始まりで、2008年3月施行の労働契約法第5条で「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と明記されました。

特に健康管理の側面に着目すると、「業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意(配慮)する義務」ということになります。

労働安全衛生法上の義務と安全配慮義務の関係

企業が労働安全衛生法上の諸規定を遵守していたとしても、同法の規定は最低限の労働上限にすぎないため、別途、安全配慮義務違反として民事上の損害賠償責任を問われる可能性があることに留意しなくてはなりません。

<労働者の健康管理上の問題に関し、労働安全衛生法上企業に義務付けられているもの>
①安全衛生教育の実施(第59条)
②中高年齢者等に対する配慮義務(第62条)
③作業環境測定義務(第65条)
④作業の管理義務(第65条の3)
⑤健康診断実施義務(第66条)
⑥健康診断実施後の措置義務(第66条の5)
⑦長時間労働者に対する面接指導等の実施義務(第66条の8)
⑧心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)等の実施義務
 (第66条の10)
⑨病者の就業禁止にかかる措置義務(第68条) など

<労働者の健康管理上の問題に関し、安全配慮義務の内容として具体的に指摘されているもの>
①作業環境整備義務(健康上問題が生じないよう作業環境を整備し、必要に応じて保護具等を使用させる義務)
②衛生教育実施義務
③適正労働条件措置義務(労働時間、休憩時間、休日等について適正な労働条件を確保する義務)
④健康管理義務(健康診断を実施するなど労働者の健康状態を把握・管理する義務)
⑤適正労働配置義務(労働者の個別的な事情に応じ、労働量を軽減したり、就労場所を変更するなどの適正な措置を行う義務)

安全配慮義務の履行と3者の役割

1.事業者の果たすべき役割
事業者は、安全配慮義務にかかる義務主体であって、健康管理(労働衛生)に関する会社の方針を明らかにし、労働者の生命・健康を損なうことがないような体制(健康管理に関する規程の整備など)や組織(産業医や衛生管理者等の選任など)ないしチェック体制の確立や研修制度の整備等を構築することが求められます。

2.管理監督者の果たすべき役割
管理監督者は、安全配慮義務の履行に関し、義務主体である事業者に変わって実際にそれを実践する履行補助者に該当します。そのため、事業者に安全配慮義務違反が認められるか否かの判断においては、その履行補助者たる管理監督者に義務違反(落ち度)が認められるか否かが具体的に判断されることになります。また、事業者の安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任とは別に、管理監督者個人の不法行為に基づく損害賠償責任が問題にされることもあります。

3.労働者本人の果たすべき役割
労働者本人は、事業者側が実施する安全配慮義務の履行につき、これに協力することが求められており、自己保健義務に該当します。この自己保健義務は事業者の負うべき安全配慮義務の範囲を限定する意味を持つとともに、事業者の損害賠償責任について減責事由となり得るものです。

要するに、
・事業者は業務が過重にならないよう調整・措置し、健康状態を悪化させない
・労働者は自らの健康状態に注意し、必要に応じて医療機関を受診する
ことです。

とくに管理監督者、労働者は健康管理に留意すること=安全配慮義務、自己保健義務という認識がない人が多いため、社内研修等でしっかり押さえておく必要があります。

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